「フリーダ」
歌劇「トゥーランドット」
「のだめカンタービレ」
オペラ「魔笛」





「フリーダ」

第1回ということで多少緊張してます。何が出てくるかお楽しみの玉手箱。皆さんを煙にまく??? 
初回なのに、Eileen@岡山です。お盆ですから〜。名古屋から久しぶりに 「のぞみ」にのったら、速い---このスピード感は、、、そう、去年見た中で、一押し映画の導入部分の疾走感。。。(無理矢理寝技に持ち込んだ感あり?)映画「フリーダ」2003年アカデミー賞音楽賞・メイクアップ賞受賞。
メキシコの女流画家フリーダ・カーロの生涯を描いた秀作。自分の個展に向かうため、盛装(メキシコの民族衣装)してベッドごと家からトラックで運ばれる冒頭の部分から、場面は一転、学校の回廊を走る女学生のフリーダ。そして彼女はバス事故で瀕死の重傷を負うが、、、彼女の波乱に満ちた生涯がメキシコの鮮烈な光と色彩を放ちながら走り抜けていく。。。
昨年、「フリーダ・カーロ展」を東京や名古屋でご覧になった方もいらっしゃると思います。近年、再評価されているらしいのですが、痛々しいまでのその自己表現に胸を突かれた方も多いのでは。ゴッホ以上に多くの自画像を描いた画家だそうです。映画でも、彼女の作品が、実際の事件の進行にあわせてスクリーンに登場します。
さて、フリーダを演ずるは、サルマ・ハエック。「デスペラード」でのアントニオ・バンデラス扮するガンマンと愛し合うセクシーな美女、のイメージは消してください。スクリーンにいるのはまさにフリーダ・カーロです。この作品で、彼女はプロデュースも手がけてます。ラテン系の女優が、ハリウッドで、愛人とか、セックス・シンボル的な役しかなかなか回って来ないことに不満を感じ、自分の祖国の画家の人生を演じたいと長いこと熱望していたらしいです。 監督は、ジュリー・ティモア。映画監督としてのキャリアは、あまり無いと思うけど、舞台演出家としては、かなり有名。私も見た(by劇団四季だけど)「ライオン・キング」の演出・衣裳でトニー賞2冠に輝いています。女性必見の映画と思いますので、まだご覧になっていらっしゃらない、しらはぎ会員の方には、是非お勧めです。残念ながら、昨年、浜松TOHO CINEMASでは上映されず。(TOHOになってから、アニメ系が多くなったと思いませんか?映画館の経営方針だから、致し方ないですが)浜松では、東映で夜一回だけ、1週間のみ上映されました。
共演は、フリーダの夫、メキシコの壁画画家ディエゴ・リベーラにアルフレッド・モリーナ(最近ではスパイダー・マンIIのドクター・オクトパス)、スターリンの放った刺客から逃れてフリーダの実家にかくまわれるトロツキーに ジェフリー・ラッシュ(「シャイン」「エリザベス」など)、画家シケイロス役にアントニオ・バンデラスが地味〜に出ているのもおもしろいところです。 では、初回はこんなところで。最期まで読んで頂いてありがとうございます。
※先日掲載の「Eileenの玉手箱」の追伸部分に誤りがありましたので、以下のように訂正致します

追伸:映画好きな方に8月のおすすめ映画"と記載しましたが、ビスコンティの「山猫」の上映は、9月28日(水)〜30日(金)於:浜松東映劇場でした。 既に、浜松東映にお問い合わせ等された方がいらっしゃったら、本当にごめんなさい。
開場 19:15、 開演 19:45で、3時間6分の映画ですので、翌日お仕事の方には、ちょっときついでしょうか? 
あらかじめ、東映にお立ち寄りになって、チラシをゲットしておくと、1,600円のところ、1,400円でご覧になれます(シニアは1,000円)。
Eileenは、東映の回し者ではないのですが、浜松でミニ・シアター系の映画はここでしか、見たことがないので、お知らせ致します。浜松以外にお住いの方、DVDで見たよ!っという方は、感想をお聞かせ下さい。
では、第1回から粗忽なことで、誠に申し訳ありませんでした。今後とも、お見捨てなきよう、よろしくお願い致します。



歌劇「トゥーランドット」

私がオペラ観劇に行くようになったのは、40代に入ってからです。ミュージカルは、まだ、気楽に見にいける感じだったのですが、オペラはちょっと敷居が高かった。西洋の高尚な伝統芸能と思っていました。これが、たまたま子供の頃ピアノを教えて頂いていた先生に、ヴィデオ・ディスクで「トゥラーンドット」を見せて頂いてから、年に一度は、オペラを見に行くことにしました。(残念ながら 浜松では、年に1、2度東欧系の歌劇場の引越公演がくるだけ。でも、同じ公演なら、東京や名古屋よりチケットが安い!)オペラは面白い!それも、コメディーのオペラ・ブッファより、悲劇が多いオペラ・セリアは、昼メロなみの急展開、ラストに向かう盛り上がり。。。バレエや大合唱もはいり、大がかりな演出で見せるグランド・オペラは、圧倒的な迫力で、人間の真理を私たちに問うてきます。

さて、オペラ「トゥーランドット」、ご存知の方も多いでしょうが、「トスカ」「蝶々夫人」を作曲したプッチーニの代表作です。支那の絶世の美女トゥーランドット姫は、氷のような冷たい心の持ち主。求婚者に3つの謎を与えて、答えられないと、首をはねる。北京の街の絞首場にはたくさんの王子の首がさらされいる。そこに、新たな求婚者が現れる---元はダッタンの王子だが、今は祖国を追われ、身分と素性を隠している。さて、彼も絞首台の露と消えるのか?そして、トゥーランドット姫の出す3つの謎とは?---いや、どきどきわくわくするでしょ。そうでもない?どこかで聞いたような話ですよね。竹取物語?でも、姫の課す3つの謎とは、かなり難問なのです。たとえば、第1の質問:「暗い闇夜に飛び交い、暁とともに消え、人の心に生まれ、翼を広げ、日毎に死に、夜毎に生まれるものは何か?」答え:「希望」--- こんな抽象的な謎に答えられなければ斬首の刑に処せられるのです。 私がヴィデオ・ディスクで見たのは、メトロポリタン歌劇場で、演じられたもの。指揮:James Levine、 演出:Franco Zeffirelli。1973年に30歳という若さでメトの主席指揮者に就任した、Levineのすばらしさは言うまでもなくViscontiの弟子にして、数々の舞台で演出家、装置家として、また、映画 監督としても傑出した仕事を残しているZeffirelliの巧みな演出。 美女トゥーランドットを演じるのは、ハンガリー人で世界中の一流劇場で活躍するEva Marton。この役は、超ドラマティックな声質のソプラノが要求されるが、彼女の最高の当たり役と言われるほど、彼女の歌唱はすばらしい。また、姫の衣装の絢爛豪華なこと。 頭には、いくつも団子をさしたような冠をかぶり、背中には、何本もの、鞘が刺さっている。。。(けなしているんじゃないよ〜。オペラファンの皆さん、Zeffirelliファンの皆さん、悪気はないよ〜)それにしても、今や、見事な舞台をヴィデオ・ディスクやDVDで見られる時代---絶世の美女を演じるEva Martonには、その歌唱力とともに、観客を納得させられるだけの、美しさも要求される。。。オペラ歌手って大変だねえ。 皆さんご存知の「椿姫」の初演--1800年代のことですが---が失敗に終わったのは、 死期の迫った病人なのに、たくましいお体のソプラノ歌手だったからというのは、有名なお話。 さて、その姫に求婚を迫る、名を秘めた王子が、(我が)Placido Domingoさま。3大テノールのお一人。歌唱、容姿、演技力、三拍子揃った方。また、ここでの、Domingo はまだ、若い!だいたいDomingo---日曜日の意味---という名前がいいよね。ちょっと、 Domingoに肩入れしすぎ?この王子様、絞首場にさらされたたくさんの首を見て、「なんて残虐非道な姫なのだ〜♪」と歌っていた直後、姫の姿をひと目見るやいなや (それも遠く御簾の向こう側ですよ)「あの神々しい美しさ、奇跡か夢か〜♪」と周りが止めるのも聞かず、命を懸けて姫に求婚することを即座に決意。これが、Domingoさまだから、たまらない。ああ、憎きトゥーランドット!

第二幕の問答の場面の、Domingoの表情がまたいい!答えが出なければ死が待っている。苦悶にゆがむ顔、額から吹き出る汗。そして、勝ち誇った表情の姫の顔が蒼ざめる時が来る---王家の血筋とはいえ、異国の見知らぬ者が3つの謎を解いてしまったのだ!姫はなんと我が儘にも、「私はそなたのものにはならぬ。何としても拒む〜♪」ちょっと、それはないんじゃないの。命を懸けて答えを出したんだ!潔く、結婚しなさい!(もう、私は、王子に入れ込んでますから〜)ところが、今度は王子が謎を出す。「私の名は、何か? もし、夜明けまでに私の名が分かったら、私は生命を差し上げよう〜♪」何でやねん?
 第三幕、姫のおふれが街中に響き渡る「夜明けまでにあの見知らぬ王子の名を探り出す為、市民は誰一人眠ってはならぬ。布告に背いた者は直ちに死刑である」王子はこれを聞きながら、美しいアリア<誰も寝てはならぬ>を歌う。。。うっとり。。。 いやいや、長くなったので、結末がどうなるか、知りたい方は、EileenまでDM下さるか、もちろん、オペラをヴィデオかDVDで見てください。最後まで、姫が本当の愛のやさしさ、美しさにめざめるのか予想もつかず、王子は死の危機にさらされることになります。オペラは、原作、作曲、オーケストラ、演出、舞台美術、衣裳、そして、すばらしい歌声と演技、合唱団、、、全てが融合した、総合芸術。歌声に身を委ねて、登場人物の誰かになりきって、どっぷりと浸りましょう。 最後に、ちょっとだけ;トゥーランドットは、"Tragi-comedy"というユニークなオペラ です。結末は、ハッピーエンドなのですが、その前に、大きな悲劇も味わわなくてはなりません。元ダッタンの奴隷女リューを演じたLeona Mitchell。彼女の、悲劇のヒロイン にふさわしい、可憐な澄んだ歌声(ソプラノ・リリコ)と美しい容姿は、今、注目株だそうです。
第2回目はちょいと力の入りすぎのEileenでした。
最後まで、読んで下さった方、 お疲れさま〜。今度、一緒にオペラ観劇に行きましょう!

 


「のだめカンタービレ」

約1年のご無沙汰でございます。あなたのEileen、お待ちかねの登場です。(あなた誰?って!! ううむ、仕方ないかも、、、)忘れた頃に、気ままに出てくることを、ご許可いただいた次第です。今後ともどうぞよろしく。

さて、今回は、二ノ宮知子原作のコミック、「のだめカンタービレ」をご紹介。10月からフジTV月9でドラマ化されるぐらいだから、ご存知の方も多いと思いますが、雑誌「KISS]に連載中のクラシック音楽を題材にとった漫画。コミックの売り上げ累計1,200万部の大ヒットとなり、現在15巻まで発売されている。一度聞けば、そのとおりに曲が弾けてしまう天賦の才と、超絶技巧を持ちながら、曲を楽譜どおりに弾くことは全く苦手---つまり、作曲者の意図を無視した好き勝手な演奏しかできないともいえる---、ウチの中は化学変化した生ゴミやら、捨てられない意味不明なもので、ゴミ溜め同然。「ぎゃぼーっ」「ふおお」などの奇声を連発し、気まぐれで自由奔放。彼女が「のだめ」こと野田恵。桃ヶ丘音大ピアノ科2年。愛すべき主人公である。二ノ宮知子先生は、実際に、ゴミの山と化した部屋の中でグランドピアノを弾く「のだめ」のモデルと出会ったことで(現実にいるとは驚きだが)このコミックの構想をたてたという。ラブコメだから、当然、王子さまが必要。「のだめ」が愛するのは、著名なピアニストの父と、財閥の令嬢(コミックっぽい設定)の母の間に生まれ、ピアノとヴァイオリンはプロ級にうまく、英、独、仏語に堪能、もちろんイケメンと、非の打ち所がない桃ヶ丘音大ピアノ科の超エリート、千秋真一。幼少の頃、父の仕事の関係でウィーンに住んでいた彼が心から尊敬するのは、世界的指揮者、セバチャーノ・ヴィエラ。ピアノ科にいながら、ヴィエラのような指揮者になりたいと切実に願う、才能あふれる真一だったが、実は、自らの将来の前に大きく立ちふさがるトラウマを抱え、悶々とした日々を過ごしていた。。。そんなある日、泥酔した彼は、マンションのドアの前で倒れているところを、隣の部屋の住人「のだめ」に拾われ、翌朝、異臭漂うゴミ溜め部屋の中で、彼女の弾く、天才的にしてデタラメな(どんなんだい?)ベートーベンのピアノソナタ第8番「悲愴」の音で目覚める、、、それが2人の衝撃的かつ運命的な出会いであった。このコミックは、真一とのだめの、音大を舞台にした、ギャグ満載のラブコメであり、その多様なギャグと、クラシック音楽界に本当にいそうな?数々の奇人変人の登場が、こちらの笑いのツボを確実についてくるけれど、実際は、クラシック音楽の魅力と、2人の人間的、音楽的成長をしっかり描いているところが、これほどまでに多くの人に支持されているゆえんであると思う。現役の音大生の協力もあって、ピアノ他、色々な楽器が実に丁寧に正確に描かれており、その構え方、弾き方も非常にリアルである。私のようなクラシック音楽が苦手な人間でも、是非この、破天荒な「のだめ王国」にかぐわしく香る音楽に触れてみたいと思ってしまう。クラシック・ファンの裾野を確実に広げたコミックともいえる。さて、ドラマでは、「のだめ」を上野樹里ちゃん(NHK朝の連ドラ「てるてる家族」で三女秋子を演じ、その後、「スイング・ガールズ」「魚は以外と速く泳ぐ」など、多くの映画に出演している)、真一を、玉木宏君(最近は、NHKの「氷壁」など、シリアスなドラマに出演しているが、私は、やはり、映画/TVとも、「ウォーター・ボーイズ」の佐藤のイメージが強く、少々不安である。シンガーとしてもデビューしているらしいので、音楽的素養を是非是非発揮して、真一の天才的オレ様キャラを体現して欲しいものだ)が演じるそうだ。さてさて、執拗に近づくのだめに辟易しながらも、彼女のピアノの才能に惹かれていく真一。そして、そんな2人の運命を変えていくキーパーソン、世界の巨匠、ドイツ人指揮者フランツ・フォン・シュトレーゼマン(のだめには、ミルヒ・ホルスタイン---牛か!---と自己紹介。のだめはずっと、彼を「ミルヒー」と呼んでいる)を忘れてはならない。その日常は、合コンとキャバクラが大好きなエロいおじさんだが、その自分勝手な行動で千秋を振り回しているようで、実は、千秋を更なる音楽の高みへと引き上げていく。(ドラマでは、竹中直人さんが演じる。一瞬、「ドイツ人だよ!」と絶句した。さぞや怪演となることであろう。)フジの放送では、真一が指揮する通称Sオケの団員が一般公募され、オーディションに合格した総勢130人が練習に励んでいるとか。彼らのLive アルバムも発売予定だそうです。(すでに、Selection CD Book が2冊、千秋真一の指揮による--って、誰の指揮???---R☆S オーケストラのアルバムも発売されているというから、「のだめ」とタイトルにつければ、クラシックのアルバムが売れる珍現象が生まれているのかも!? ドラマシーン用音楽および楽器演奏時の演技指導は、東京都交響楽団が全面バックアップというから、音楽に関しては、期待もてるかな?さて、コミックのファンとしては、原作を重んじてしまうので、ドラマ化は、楽しみでもあり、失望のドン底に落とされる不安の種でもあります。コミックは、もう、パリ編が展開されています。私は、1巻を斜め読みして、すぐにその虜となり、翌日、即行残り14巻を「大人買い」---若者はこう言いますが、ただの「生活費流用買い」です---してしまいました。コミックはあまり、、、という方も、クラシック音楽はいまいちという方も、この秋、「のだめ王国」を覗いてみませんか?

 



オペラ「魔笛」

オペラ「魔笛」のレクチャーも、あと10日と迫ってまいりました。
あらすじだけでもご紹介しま〜す!と申し上げたまま、いやぁ、遅くなってしま
いました。「魔笛」は1791年9月28日に完成し、そのわずか2日後(初見で演奏、すぐにリハーサル?)にウィーンで初演された、ドイツ語のジングシュピール(歌芝居)です。台本は、興行師兼台本作家兼役者のシカネーダーが書いており、実際、彼自身が、パパゲーノ(鳥刺し---野鳥を捕らえて、生計をたてているらしい。ドジでおっちょこちょいの愛すべき道化役)を演じています。貴族中心の宮廷劇場のための作品ではなく、庶民的な作品で、空前のヒットを記録したものの、その2ヵ月後、モーツアルトは病に倒れ、12月の初旬には、35年の短い生涯を閉じたのです。彼のこの作品に対する愛情は並々ならず、死の床で、「もう一度『魔笛』を聞きたい」と呟いたといわれています。王子タミーノが夜の女王から頼まれて、女王の娘パミーナを救い出しに行くお話。女王から魔法の笛を渡された王子は、悪者ザラストロの元から無事娘を救い出し、二人はめでたく結ばれる、お、し、ま、い....だったら、子供も楽しめる単純なおとぎ話なんだけど、メルヘン風なお話は、フリーメイスンの教義が反映され、暗喩に満ちた支離滅裂な展開になってしまいます。
☆ 第1幕: 舞台は、何故か古代エジプト。王子タミーノは、大蛇に追っかけられて、情けなくも気を失う。(普通ないよね〜。王子の登場としては、最悪です)夜の女王の3人の侍女に救われた王子は、女王から、悪僧ザラストロの神殿に囚われている娘パミーナの救出を依頼される。パミーナの美しい肖像画に魅せられた王子は、魔法の笛を女王から渡され、そこに居合わせた鳥刺しパパゲーノは、魔法の鈴をもらい、二人は神殿へと旅立つ。ちょ、ちょっと待って! あとで、パミーナは王子に一目ぼれしちゃうから、王子はかなりハンサム。でも、蛇に失神するような王子に、救出なんてできると思う? 蛇を退治したのは、3人の侍女。チャーリーズ・エンジェルならずとも、3人の侍女を派遣したほうが、確かじゃない? それよりも、夜の女王の圧倒的な存在感。ど派手な衣装に、コロラトゥーラの超絶技巧の素晴らしいお声。何故に、へなちょこ王子と鳥刺しに大事な娘の救出を頼むの?

な〜んかおかしいな?という私の疑念を無視して、お話は勝手に進み、二人はザラストロの神殿の入口にたどり着く。ザラストロを讃える合唱曲が響き、たくさんの取り巻きを従えて、ザラストロが重々しく登場。タミーノとパミーナは恋に落ちるが、二人が結ばれるためには試練が必要と、ザラストロは2人を引き離し、パパゲーノにも、試練に耐えれば恋人が得られると、試練の殿堂へと連れて行く。

どうなってるの? タミーノ? ザラストロは、パミーナを誘拐していた悪者のはず。あなたは、ザラストロを見たとたん、彼は実は賢者だと悟ったの? それとも、恋の成就のためには、夜の女王との約束なんて、どうでもいいの? なあ〜んか混乱したまま、一旦休憩です。
☆ 第2幕: 第1の試練は「沈黙」。夜の女王の3人の侍女の邪魔立てにも屈せず、無言を通すタミーノとパパゲーノ(彼は、ちょっと危なかったが)。一方、夜の女王が現れ、パミーナにザラストロを殺せと短剣を渡す。もう、この辺りで、お話はめちゃくちゃ。何のために神殿に来たか忘れ、試練に立ち向かうタミーノとパパゲーノ。3人の侍女は、やっぱり、楽々パミーナを救出できたんじゃないか? それより、もっと分からないのは、夜の女王。ザラストロ殺害のために、娘パミーナをスナイパーとして潜入させていたのかと思うのは私だけ?修行中のタミーノが口を聞いてくれないので、絶望したパミーナは自殺を企てるが、3人の童子(どこから来たの?)がタミーノの変わらぬ愛を告げ、自殺をとどめる。その後、何故(?)か、タミーノはパミーナと一緒に試練を受けることを許され、手に手を取って「水」と「火」の試練に臨み、夜の女王からもらった笛を吹くことにより(?)、二人は、見事試練に打ち勝つ! パパゲーノも、夜の女王から渡された鈴により(?)パパゲーナという恋人を得て、「パ、パ、パ」と鳴き交わし、子供をたくさん作ろうと喜ぶ。夜の女王のアイテムって、パミーナ救出の役に何もたってないのね〜。夜の女王と、3人の侍女、モノスタートス(ザラストロの召使。ムーア人。美しいパミーナを自分のものにしようとする。何故、こんな不道徳な人物を召使としているのか、全く分からないので、これまで省略。フリーメイソンの博愛思想から、必要な人物なのか、私には不明)が復讐に来るが、雷鳴とともに、一同は地獄に墜ちていく。明るい光の中、ザラストロ及び全員が、イシスとオシリスの神を讃えて、あっけにとられている私を置き去りに、オペラは幕を閉じる。
 
さて、ここまで、頑張って読んで下さった皆様は、私が、「魔笛」のあらすじを書くのに時間がかかってしまった理由がお分かりになったことでしょう。「魔笛」には、ストーリ上、たくさんの《破綻》があるからこそ、解釈が広がるという説もあるらしいですが、第1幕の最後で起こる、大どんでん返し---姫の救出劇から、フリーメイソンの教義に基づいた、試練劇へと、何の脈絡もなく変わってしまうところは、私には、全く理解しがたいです。にも関わらず、「魔笛」は、何故、空前の興行成績をあげたのか、ゲーテも、ベートーヴェンも、ワーグナーも何故「魔笛」に感動したのか。あまりの破格の《破綻》ぶりに、その魅力があると言う人もいます。色々な解釈があるにしても、モーツアルトの崇高で美しい音楽があったからこそ、「魔笛」は彼の最後のオペラとして、光輝いているのです。数々の美しいアリア、随所に織り込まれている2重唱、3重唱、5重唱のハーモニーの甘美さ。それぞれの人物を性格付ける豊かな曲想、そして、オーケストラとの調和。是非、映像と音楽であなたの感性に訴えかける、椙山先生のレクチャーで、魔笛の真髄を味わってくださいね。(11月25日(日) 於:浜松北高同窓会会館)

ではでは、Eileen は、少々疲れてしまいましたので、ここまでで、失礼します。皆様とご一緒に、来年1月6日のプラハ国立劇場オペラの「魔笛」を堪能できることを、楽しみにしています。

 


 
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