今回は「早期痴呆発見法」のお話。早期発見+早期治療が痴呆治療対策の原則なんだから、とにかく早く発見しないとお先真っ暗という事なんです。
また「受け売り」です。でも、これだけは、体験的直感なんかではなく、医学的裏付けがあった方がいいですよね。アンチョコは浜松医療センター顧問・浜松早期痴呆研究所所長の金子満雄医師がまとめた『地域における痴呆診断と対策』という早期痴呆の専門書です。
まずは、痴呆=認知症とは何か?
「痴呆の始まりは物忘れではなく、意欲低下、自発性、計画性、機転の低下、注意分配能力の低下などである」。根拠は「痴呆の本態は大脳全般の障害であるが、最も侵されやすく、また最初に障害されるのは人の最高次機能をコントロールしている前頭前野である」という二万人以上の臨床観察。
ここでいう「痴呆」とは、アルツハイマー病などの病気や脳の血管の損傷が原因の症状(血管性痴呆)ではなく、いわゆる廃用型(使わないことで脳機能が退化)の痴呆のことです。一般的には「アルツハイマー型痴呆」などとも呼ばれています。
ここで注意したいのは、「物忘れ 即 痴呆」ではないという事。物忘れは、白髪みたいに、誰もが体験する自然な脳の老化でそうですよ。ホッ…?
でも、恐いのは、特別な用事がない平凡な一日、「午前中にコレをして、午後はアレを片づけて…。そうそう、デパートの買い物を今日すませられそう。じゃあ、片づけをやめて、デパートへ行って、夕方のあの番組までに○○屋の総菜を買って帰ろう」なんて計画が思いつかない事。
なんとなくボーッと一日が過ぎ、いつもの家事をなんとなくして、今日も平穏無事でよかったと思っていると、それこそ痴呆まっしぐらの道なんですよ。
痴呆は三段階?
1. 軽度痴呆 生活には一応、支障はないが、社会生活には明らかな支障が起こっているレベル。
2. 中度痴呆 セルフケアには問題がないが、家庭生活に明らかに支障があるレベル
3. 重度痴呆 生活全般に支障があり、問題行動を起こすレベル
軽度痴呆=早期痴呆なんですが、現実的には軽度痴呆の発見・自覚は難しく、中度痴呆ぐらいで、やっと痴呆に気づくようです。我が家もしかり…。
ここでいう「軽度痴呆」とは、例えば、会社勤めが困難になるのではなく、会社でいつもの仕事をするのは問題ないけれど、会議でアイデアを求められる、営業で新規訪問先を自発的に計画する、などの機転や発想を求められた時にオタオタして指示待ちになってしまう状態のことです。ドキッ…ですか?
専業主婦ならば、テレビで見た新しい料理を作ってみる、近くにオープンした店へすぐ行くなどの好奇心と積極性がなくなったら、もう赤信号です。
「中度痴呆」になると、同じ献立ばかりを作ったり、何かに気を取られると料理をしていた事を忘れて鍋を焦がしたり、などなど、日々トラブル続きになり、「何をやっても失敗ばかり」と嘆く状態です。思い当たれば「中度痴呆」です。
びっくりしましたか。
「年をとったら、そんなの当たり前じゃん」と思っていませんでしたか?
ところが、みんな「廃用型痴呆進行中サイン」なんです。
信じたくなかったら、無視してください。でも、結果はすぐに出ますよ。
別枠で、早期痴呆発見のセルフチェックリストと、簡単な確認テストをつけました。痴呆が不安なご両親などに試し、結果が悪かったら、すぐに高齢者脳神経科(浜松医療センターの場合)等を受診してみてください。
この分類法だと、中度痴呆になってしまってから、アタフタと必死で引き戻し努力をしているオニ娘の心からの警告です。軽度痴呆ならば、楽しみと生活の刺激を増やす努力さえすれば、間違いなく正常人に戻れるのですから。
中度痴呆になってしまうと、ほんのささいな事で、ガクンッと落下。白内障の手術で三泊四日の入院をしただけで、母の痴呆は明らかに進み、オニ娘は呆然としています。入院+抗生物質+全身麻酔(圧迫骨折六回の母は腰痛のために全身麻酔)=痴呆超悪化。一年半の努力がアワと消え、また仕切直しです!
1. 軽度痴呆
(1)一日や一週間の計画が自発的にたてられなくなる
(指示待ち人になる)
(2)反応が遅く、動作がモタモタしている
(歩行も手の動きも)
(3)同じことを繰り返し話したり、尋ねたりする
(買い物も同じものを買ってくる)
(4)無表情・無感動の傾向になる
(5)ボンヤリしていることが多い
(6)生き甲斐を感じない
(7)根気が続かない
(何でも面倒くさがる)
(8)発想が乏しく、画一的となる
(9)仕事をテキパキと片づけられない
(10)相手の意見を聞こうとしない
●以上のうち、4項目以上に○がついたら軽度痴呆の可能性が大
●痴呆の大切な最初の兆候は、意欲がなく、自発的に計画して、何かをやれなくなる事。特に周囲の情況に対応して、今、何をやるべきかが分からなくなっている。
2. 中度痴呆
(1)月日があやふやになる
(おおよそ何月であるかは分かっている)
(2)料理がうまくできず、味つけがおかしくなる
(おかずの種類が減る)
(3)今までできていた仕事(洗濯物の整理、皿の片づけ)ができなくなる
(4)ガス・風呂の火、電気の消し忘れ、水道の止め忘れが目立つ
(5)身だしなみに無頓着になる
(6)季節や目的に合った衣類を選べない
(7)薬を自分できちんと服めない
(8)昨日のことをすっかり忘れてしまう
(9)お金や持ち物のしまい場所を忘れて、「盗まれた」などと騒ぐこともある
(10)簡単な計算ができない
●以上のうち、4項目以上に○がついたら中度痴呆の可能性が大
●月日を忘れるレベルでは、自分が今、どこに来ていて、何をするかなどの状況把握がうまくできなくなっている(見当識の低下)。簡単な家事を頼んでも頼りにならない。火を使い料理を作らせるのが不安。身体能力も低下。
3. 重度痴呆
(1)家族の名前、人数や続柄が分からない
(2)服の着方がいいかげんになる
(または一人で服が着られない)
(3)汚れた下着を平気で着けている
(4)入浴を嫌がる
(5)食事を済ませたことをすぐに忘れ、また食べるという
(6)自宅の方向がわからなくなる
(すぐに迷子になる)
(7)家庭生活全般(入浴・食事・トイレ)に介助が必要になる
(8)独り言や同じ言葉の繰り返しが多くなる
(9)誰もいないのに「誰かがいる」などと言う
(10)大小便の失禁やトイレを汚すようになる
●以上のうち、3項目以上に○がついたら重度痴呆の可能性が大
●指示がなければ、何をしていいかわからないので、ただジッとしているか、意味のないこと(何かを引っ張る、たたく、破くなど)を単純に繰り返したりする。時間がわからず、本能的、感情的になる。この段階になると、かなりの脳細胞が壊死・脱落していると推測され、回復の可能性は少ない。
(1)花・動物名想起テスト(一分間)
指定された花の名前、または動物の名前をいくつ想起できるかを調べる。
●出題例「世界中の四つ足の動物の名前を思い出して、次々と挙げてください。ただし、同じものを繰り返し言わないように」
・「花・動物」以外にも、畑の作物、家具調度品などでもテストができる。
○同じものの反復は誤答に含める。
〈評価〉 60代=一分間に15個以上(最低12個で合格)
70代=一分間に12個以上(最低10個で合格)
○軽度・中度の痴呆がある場合は、一分間に4〜5個ぐらいが普通。
検査の途中、20秒〜30秒の間、全く答えが出てこない空白時間がある。
(2)セブンシリーズ(7 Subtraction Test)
100から順に7を引いてもらい計算能力、注意集中力、持続力などを調べる。
●出題例「100から順々に7を引き算してください」
〈評価〉 「93 86 79 72 65 58 51」 までスムーズに答えて合格。
○正常人ならば20〜30秒ですむが、1分以上要すると異常=痴呆と判定。
最初の93→86ぐらいまでは順調に進むが、そこで頓挫し「何を引くんでしたか」とか「今どこまで行っていましたか」と聞き直すこともしばしばあるが、そこで不可=痴呆と判定。
○似たテストで100から7を引いて計算能力だけを判定する方法もあるが、この場合は、「100から7を引いたらいくつになりますか」と質問し「93」の答えを得たら「それからまた、7を引いてください」と質問していき、「65」に達するまでの正解数を調べる方法。時間は無制限。誤答があっても、そこから7を引いた数が正しければ、そちらは正解とするのでセブンシリーズよりも簡単なテストになる。
○痴呆検査=前頭前野機能テストならば、セブンシリーズをすれば、ほぼ確定。
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