以前、このコーナーでご紹介した黒ウサギのスミレが、腎臓結石で死んでしまいました。まだ二歳半の若さだったのに、先天的な腎臓障害をかかえていたらしく、様子がヘンだと気づいて病院へ連れていった時には、もう手遅れでした。
それでも、毎週、人間の腎臓透析にあたるリンゲル注射をしてもらい、約一ヶ月半の闘病生活を続けました。
スミレの異常に気づいたきっかけは子犬でした。
一人暮らしの癒しにしたいと、隣家の叔母がポメラリアンの子犬を飼いました。ルルと名づけて溺愛したのに、たった一週間で飼育放棄。結局は、私たちが飼うことになったのです。
スミレが二階にいるので子犬は一階へ。でも階下に子犬がいる異変にスミレが敏感に反応し、今までにないほどなつきます。姿を追いかけ、足元から離れず、身体を寄せては甘えます。
好んで子犬を飼ったわけではないだけに、そのけなげさが悲しいほど。スミレが大切…と何度も思いました。
子犬も、やはり、甘えてきます。階下でポツンと過ごす寂しさか、私たちが相手をする時には、はしゃぎ、やがて疲れ切ったように膝の中にうずくまってくるんです。二階へ戻ろうとすると、狂ったように甘え足にしがみつく姿がいじらしくなります。
スミレと子犬を飼う私たちの心もズタズタになり、なんとか二匹が仲良くなってほしいと願って、スミレのテリトリーである二階へ子犬を連れて行きました。
案の定、子犬はシッポをふってスミレにじゃれつき、スミレはびっくりして逃げまわります。でも、子犬を押さえていればスミレから寄ってきて、二匹が鼻を合わせ、臭いをかぎあい、なんとなく互いを認め合っている感じになるのです。はちきれんばかりに元気な子犬は、うれしくてうれしくて、自由になったとたんにスミレを追いかけます。
その時、スミレの異変にやっと気づきました。すぐに息がきれ、なんとも弱々しいんです。
スミレの病気がわかってからは、元通りに子犬は一階、スミレは二階と住み分けさせましたが、スミレが病院へ行くときはいつも一緒。子犬はスミレをいたわるように見つめ、スミレも子犬を受け入れ、まるで互いを愛おしんでいるような態度でした。
子犬が来てから情緒不安定で落ち着きがなかったスミレが、一緒に病院へ行くようになってからは、昼間の甘えがなくなり、昼間は子犬の時間、夜は自分の時間と理解したかのように、昼間に階下へ行く私たちをは穏やかな態度で見つめていました。
スミレが死んでから一週間して、子犬を二階へ上げました。不思議なことに、スミレが好んだものが子犬のおもちゃになり、スミレの臭いを愛おしむように、スミレと同じ場所ばかりにいます。もう大人の体型に成長したルルは、スミレの思い出を共有する家族になりました。
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