「河津桜」は1月から3月頃まで咲く桜の種類で「ソメイヨシノ」に比べて色はかなりはっきりとした桃色で、葉っぱも同時にすこしづつではありますが出てきてそれはそれは春を待ち望んでいる日本国民には一番好まれる花であると思います。「ソメイヨシノ」は3月の卒業式と4月の入学式にはかかせませんが、それよりかなり早い時期にパーッと野山をピンクに染める「河津桜」は、枯れ果てた雑木林に突然神様が間違って桃色絵の具を日本の里山にぽたぽたぽたとこぼしてしまったような、ちょっと意外な鮮やかな桃色なのです。春といっても寒さが残る3月3日のひな祭りには、この鮮やかなピンク色は、もはや欠かすことのできないというりっぱな役割りを確立したと思います。
苔むした古い立派なソメイヨシノ桜は一本だけ立っていてもそれはそれで凛としていて、里山に映えてりっぱな絵になります。しかし、河津町はきれいな小川と目にも鮮やかな黄色の菜の花畑が揃ってそして近くには温泉があり、それらがうまく調和されて観光誘致に大成功したのだと思います。
伊豆は国民の海水浴離れとともに、レジャーの多様化が進み、ちょっと田舎っぽい観光地として若者には映り、団体客相手の大きなホテルは時代について行くことができず、老朽化が増し、一部のホテルを除いて痛々しい温泉街になっていました。また“伊豆”イコール“地震”と思われていた時代がありました。伊豆の河津町は温泉地としては、私が記憶する限り一番人気のところではありませんでした。しかし、河津桜発祥の地として、町民が大変な努力を重ねてこの2月という観光にはまだまだ寒いこの時期に観光バスの多さでもって道がいっぱいになり、車が進まないほどの集客を成功させたのだと思います。
平日も多くのご老人に口コミでもって人気が高まり、各観光会社がこぞって宣伝をした成果
が出て大変な数の大型観光バスが乗り入れています。休日ともなるとマイカーが殺到して観光協会が用意した駐車場は、午前9時台で満車となる人気ぶりです。地元商工会の方々の努力も大変なものです。駐車場の確保、トイレの増設などなど。川沿いには普通
の民家が並んでいます。毎日何百何千の人がぞろぞろと家の前を歩いているのです。一軒でも「うちは協力できん、断る!」なんていったら今の河津町の発展は望めなかったと思います。
観光地の宿命ともいえる閑古鳥が鳴いていた2月に、ここ河津町の人たちのひたむきな努力とふるさとを愛する心を見ていてくださった神様がごほうびに「花咲じいさん」をつれてきてくれた、そんなイメージです。
さて私は、早朝に浜松を出て何とか駐車場に車を止めさせていただきました。
商工会青年団のおそろいのはっぴを着たおじさんが誘導してくれました。青年団???どう見ても70歳ぐらいのような・・・・。まあ、いいかっ・・・。
さあ、出発です。桜並木の土手はずっと続いていて山のほうから、伊豆急行の河津駅、そして海まで桜と、足元には目にも鮮やかな黄色の菜の花が川のせせらぎに沿って続いているのです。「ちょっと、桜のほうをぜんぜん見てないでずっとおまんじゅうやさんばかり見ているねえ。」って夫が言うのです。
そうなんです。私はずっと河津桜と並んでいる「でみせ」にどうも興味の半分、いいえ、興味の70パーセントはお饅頭の試食コーナーが気になって、気になって・・・・。
河津町の商工会は河津駅近くからずっと上流までいっぱいにお店を連ねてくれていて、それはそれはにぎやかなのです。地元産のしいたけやわさびも売っています。たこやき、焼きそば、おでんコーナーもあり、ゆっくり食事もできます。ここにはごみ袋が完備してあり、感心したことには道にはごみが落ちていませんでした。きっと商工会の人が毎日掃除をして下さっていて、この清潔感を保っているのだと思いました。とくに「さくら」にちなんだお土産は数知れず、その包装紙はピンク色か、桜のデザインがされてその華やかな色彩
の豊かさにおもわずお土産を買いたくなります。行かれなかった人にここのあでやかな春を運んで帰りたいってそんな気にさせてくれます。
車椅子の人もたくさん来ていました。専用の駐車場もあります。が、総合案内所のようなところがないためわかりにくいようです。車椅子用トイレも私が見る限りなかったです。見落としたかもしれませんが。いたるところに仮設トイレがありました。そこに一人10円の寄付をお願いする箱がぶら下がっていたのですが列を作って待っている人は、残念ながらお金入れる人は数少ないようでした。たった10円なのにです。私はこんなこと言うと怒られるかもしれませんが、横に「桜咲き神社・入学試験合格祈願」のお賽銭箱でもおいておけばよっぽど、10円玉
がたまると思いました。地元の方の気持ちを考えるると、こんなジョークも出てしまいました。すみません。
近くの学校の校庭も運動場を駐車場に開放してくれていても道は車でいっぱいです。私は東京方面
の方は伊豆急行で来ることを絶対に薦めます。焼きそばやのおばちゃんいわく、「昨日は3時頃着く予定の観光バスが夜桜見物になってしまったんだってさ。」桜がピークの時期は、時間をづらすなど考えないと本当にたどりつけません。「けっこう歩いたね。いい運動になったね。」と夫に言いましたら「あれだけ試食のお饅頭を、お餅を、羊羹を食べてこれじゃあ痩せるわけないね。」っていうのです。私は、ふ~~んと聞き流す知恵をつけました。やはり花にはだんごは不可欠ですよね。さくらあんぱん、さくらお饅頭、さくらもち、伊豆産しいたけをお土産に買って帰りました。子供の絵日記のように最後は、「楽しい一日でした。」でしめくくります。
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