閑話休題
   
「平成21年8月3日、4日 富士登山
 富士宮口から登頂まで ご来光は4日 赤岩八合山小屋前にて・・・・フロムM」
 


   
食中毒な季節到来!
福地美保(31回)
 
【消化器外科・内科】

 先日、浜松市保健所の傘下にある浜松市食品衛生協会主催の講習会に参加した。飲食店事業主の方々の1年に一度の必修講習で、私にとっては異業種の講習会ではあったが興味深いのでご相伴させてもらった。飲食店業界でも医療機関でもやはりこの梅雨の時期に気になるのは、食中毒の発生傾向とその対策である。自らが経営する飲食店で食中毒を一度発生させたら最後、廃業を余儀なくさせられるケースも多い昨今である。しかしながら、食中毒に関わる細菌やウイルスの種類や型、さらにはその原因となる食材は概ね判明していて、いくつかの注意を怠らなければ脅威にさらされることはないといっても過言ではない。

 平成20年度の静岡県における食中毒発生件数は28件で、うち浜松市では8件発生している。8件の食中毒はそのうち半数が6〜8月に起きていて、その原因菌はノロウイルスが半数でカンピロバクターによるものがそれに続く。平成21年度は6月22日現在、浜松市で5件の食中毒が発生している。ノロウイルスとカンピロバクターによるものである。

 ノロウイルスといえば、1968年にアメリカ合衆国のノーウォークでの胃腸炎の流行をきっかけに1972年に発見された。日本の感染症発生の動向調査によれば、冬季の前半はノロウイルスによる胃腸炎が多く、発症すると下痢、嘔吐、発熱などの症状を呈し、通常は3日以内に回復するが、体力の弱い幼児や老人は死亡する場合もあるので注意が必要である。この非細菌性急性胃腸炎を引き起こすノロウイルスは、カキなどの貝類による食中毒の原因になる。特に生カキによる食中毒の殆どはノロウイルスが原因とされる。生カキ食中毒の予防は、(1)「生食用」と表示されたカキのみ生で食べること。「生食用」と表示されていないものは加熱調理用のカキなので生では絶対に食べないこと (2)生食用のカキには採取海域名が記載されているはずなので、それがないものは絶対に生で食べないこと、これらが大事である。その他の注意としては、賞味期限を守り、食べるまでは保存温度以下での保存を守り、盛りつけたらできるだけ早く食べ、生カキの調理に使用したまな板・皿・はし等は必ず洗浄消毒して次の調理に使う、などが挙げられる。

 最近特に発生が増加して注目を集めているのがカンピロバクターによる食中毒だ。カンピロバクターはニワトリやウシなどの家禽をはじめペット、野鳥、野生動物などあらゆる動物がもっている。60℃20分以上の加熱で死滅するが比較的少ない菌量で感染を起こすのが特徴だ。鶏のササミ・レバー・砂ズリの刺身、鳥のタタキ、牛レバーの生食はカンピロバクター食中毒の主な原因食品である。鶏肉や牛肉の生肉に付着しやすい菌で、肉が新鮮であればあるほど菌が付着しているともいわれるほどである。食べてから発症までに2〜7日かかり、主な症状は下痢、腹痛、発熱などが1週間ほど続く。カンピロバクター食中毒を予防するには、鶏肉と牛レバーの生食はしない、この一言に尽きる。あとは鶏肉や牛レバーを取り扱った調理器具の洗浄や手洗いを徹底して、鶏肉や牛レバーに付いていたカンピロバクターを他の食品に付けないように注意することである。また、焼肉屋などの飲食店で生の鶏肉や牛レバーに添えられている野菜などは、生のまま食べるのは控えた方がいいと思われる。

 夏期は気温や湿度が高くなり、ただでさえ食中毒が発生しやすい季節である。栄養バランスの良い食事を摂り、少しでも体力をつけて快活に過ごしたい季節を迎えて、美味しいものを美味しくいただき心身ともに健康な毎日を送りたいものである。

 
福地美保(31回)
医療法人正圭会
福地整形外科消化器科医院
菊川市青葉台1−2−3
TEL 0537−35−3232

 

   
新型インフルエンザへの備え―冷静に、確実に
仁尾栄子(29回)
 
【小児科】

 皆さまこんにちは。今回は予定を変更して、今騒がれている新型インフルエンザについて、対策をお知らせしたいと思います。
 もうすでに対策を講じている、という方も多いと思いますが、ポイントは2点です。

  1. 一般的感染対策をきちんとすること。
  2. 感染の機会をできる限り減らすこと。

 実にシンプルでしょう。この2点を自分の生活に当てはめて、いかに徹底できるか、ということが重要です。

  1. 新型といえど、インフルエンザには違いない、ということで、まずは日頃から栄養バランスに気をつけ、十分な栄養を取り、体力、免疫力をつけておくことが必要です。手洗い、うがいをまめにきちんとして、外出時にはマスクをします。この手洗い、単純なことのようですが、すべての感染対策の基礎の基礎ですので、くまなく丁寧に洗う癖をつけておきましょう。
    熱、咳、くしゃみなどの症状のある人は必ずマスクをつけること、またこのような人と接するときにもマスクをつけましょう。咳やくしゃみを抑えた手、鼻をかんだ手は直ちに洗うことも重要です。(咳エチケット)

  2. インフルエンザは人から人へうつります。ですから、山の中で自給自足生活でもしていれば絶対にかからないのですが、そうはいかないので、お住まいの地域に感染がひろがってきた場合、どうしたら似たような状況にできるか考えましょう。最低限(2週間程度)の食料や、日用品を備蓄しておきます。災害時と違い、ライフラインは当面使えると思いますので、保存食などの選択肢も広いのではないでしょうか。家族構成や嗜好などを考慮して、買い物に出なくてすむように準備してください。宅配システムや通信販売なども上手に利用するといいと思いますが、玄関の外で、双方マスクして荷物の受け渡しをすれば安心です。
    仕事などでどうしても出かけなければいけない場合、公共の交通機関はなるべく避け、なるべく人と会わずにすむ方法を考えます。もちろんマスクを着用し、外出後のうがい手洗いを励行します。
    持病があって定期的に受診しているという方もいらっしゃると思いますが、インフルエンザ流行中の病院は危険なところと思ったほうがいいです。常用薬はあらかじめたくさん処方してもらっておきましょう。不要不急の受診を避けることは、医療の確保への協力という意味でも重要なことです。

 以上のことを家族ぐるみで行うことが大切です。何を備蓄するか相談したり、学校が休みになったらどうするか、勤務変更が余儀なくされたらどうするか、万一家族内に感染者が出たらどうするか、などいろいろな場合を想定して、どのように家庭内で役割分担し、家庭を維持していくのか、話し合っておくことも大切ですね。最寄の発熱相談センターの電話番号を控えておくと便利です。

 感染情報は日々刻々と変化しますので、正確な情報を収集して、対応していきましょう。
 今回の新型インフルエンザは今のところ毒性は季節性インフルエンザと同等とのことで、休校措置なども地域の事情にあった緩やかなものになってきていますが、季節性インフルエンザでも毎年平均して全国で1万人ぐらいなくなるそうですので、決して侮れないと思います。
 でも地震などの天災に比べたら、ある程度準備する時間があるわけですし、どうすれば予防できるかもわかっているのですから、対処しやすい相手とも言えます。自分(家族も含め)の身は自分で守る、という精神で、冷静に今自分にできることをきちんと行っていきましょう。

 
重症心身障害施設・エコー療育園  仁尾栄子(29回)

 

   
あなたの足は大丈夫?
石井眞澄(26回)
 
【皮膚科】

  こんにちは。26回卒の石井眞澄です。前回は、大学時代テニスに夢中になって、しみいっぱい、しわいっぱいの話をしました。卒業後は仕事やら、育児やらで、25年ほどテニスも運動もせずにいましたが、4年前より夫のお許しを得て(?)少しずつテニススクールに通うようになり、今では週3日、4回ほどスクールに通えるようにまでなりました。(家族の理解と夫の協力のおかげですが、夫は、あきれているようです。)若いつもりでやってしまう為、肉離れにはなるわ、膝の靭帯は伸びてしまいカクカクするわで、年には勝てないものです。ふと足の爪を見たら白く厚くなっていたのに少しビックリしました。
  実は、このつめが白くなるというのは、曲者なのです。白く厚くなりつめがぼろぼろと取れてくると爪の水虫を考えなくてはいけません。また厚くならなくても、爪が白く濁ってしまうのも心配です。ペディキュアを久しぶりに取ったときなど時々そのような爪の変化が見つかることがあります。これは、見ただけでは、爪水虫なのかそうではないのかは、判らず、爪を一部削って顕微鏡で検査しないとわかりません。爪だけではなく、足の裏らや、ゆびの間の皮がむけていたり水ぶくれになっていたりすると足のほうにも水虫が感染しているかもしれません。実は、足の水虫暦が長い人ほど、爪水虫になりやすいのです。ある統計では、1年以内でその40%に、3〜5年では、その60%に爪水虫が合併していたとの統計があります。また、足水虫は、比較的塗り薬で治りやすいのですが、爪水虫は、塗り薬ではほとんど治らず、むしむしする季節になると、爪水虫から足のほうに感染が広がり、治っていたはずの足の水虫がまた再発してしまうのです。そんな意味では、爪水虫をしっかり治さないと足の水虫は治らないことになります。
  ‘水虫って虫なんですか?’と、時々聞かれます。水虫というのは、白癬菌という‘カビ’の一種で、皮膚や毛などを構成する‘ケラチン’というたんぱく質が大好物です。カビですから高温多湿が絶好の発育条件となるわけです。足の形にもより、足の指がぴったりとくっつきスキマがないと蒸れやすく要注意です。また、指の間にスキマがあっても、きついパンプスで、足指が横から押さえられ、指と指がくっつきスキマがなくなると感染しやすくなります。つまり、ストッキングに革のパンプスで、長時間蒸れた状態になると水虫になりやすくなるわけです。ある有名な実験で、水虫の菌を実際に、足に付着させどの位で感染するか調べたところ、1日で感染しました。感染した皮膚の組織を顕微鏡で見ると細長い白癬菌が皮膚の一番表面を覆っている角層という一番固い層を溶かして入り込んでいるのが見られます。(1日で白癬菌が角層を溶かし入り込むと聞いたとき私はちょっと驚きました。実はこの角層、外界からの有害なものが、体内に侵入するバリアーの役目があるのです。また汗や脂腺から分泌される脂は、角層をしなやかに保つとともに、細菌などをシャットアウトする抗菌力もあるのです。そのため、もっと時間がかかるかと思っていたのです。)ですから、毎日しっかり足の裏や足の指の間を石鹸で丁寧に洗い、たとえ白癬菌が付着しても洗い流し、菌をとってしまえば感染しないということになります。
  では、どのようにして、水虫はうつって行くのでしょうか?白癬菌は、皮膚のあかの部分の角層に住んでいるわけですが、白癬菌が住んでいる皮膚がむけ、ほかの人の皮膚に付着しうつるという訳です。むけた皮膚が付着しているのは、スリッパや、バスマットです。時には、じゅうたん、畳、床などにも見られます。でも、やはりなんといっても、お風呂場のバスマットには多くの白癬菌が存在し、お風呂上りの濡れた足に付着しやすいといえます。家族の方に、足の裏の皮がむけていたり(角化型)、指に間がただれていたり(趾間型)、小さな水ぶくれ(水疱型)ができていたら水虫が怪しいのでぜひ、皮膚科で検査してもらってください。ただし検査の前に一回でも水虫の薬を塗ってしまうと、菌糸がかなり少なくなり、はっきりと水虫と診断ができなくなってしまいますので、絶対に水虫に薬は塗らず皮膚科を受診なさるのが宜しいかと思います。そんな方がいる御家族は、少し差別かもしれませんが、一人一人個人用のバスマットを用意したほうが、家族内感染が防げると思います。また、お便所のスリッパなども共用は避けたほうがよいといえます。また、多くの人が足を拭く、今はやりの大型銭湯やアスレッチククラブのバスマットでは、足を拭かないほうがよいかもしれません。予防が大事ですね。
  さて、爪水虫の治療は、薬の内服をお勧めします。薬は、2種類あり、半年又は3ヶ月内服します。内服4ヶ月ごろより、少しずつ爪の根元からきれいな爪が生えてくるのが見え始めます。きれいな爪は少しずつ伸び白く厚い感染した爪が押し出され、きれいな爪に生え変わるのです。内服のみではやはり不十分で、浮いた爪や、ボロボロとした爪は、ニッパなどできるだけ取り去り、ぬり薬を塗ると効果的です。飲み薬は、浮いた爪などには、効かないからです。副作用もあり、少し面倒くさいかもしれませんが、1ヶ月に1回は、血液検査をしなければなりません。でも、何年も爪水虫で悩んでいた方が、1ヶ月お薬を飲み血液検査で、軽い肝障害が見つかったため、内服を中止しなければいけなかったのですが、その後、経過を観察したところ3〜4ヶ月後には、きれいな爪が生え始め、直ってしまったか方もいらっしゃいます。これには私もビックリしました。
  そうそう、私の白い厚い爪、実は水虫ではなく、激しく動いたため、爪と指が激しくこすれ、出血や炎症を起こし、そのために爪が厚くなってしまったようです。
  素敵な足、きれいな爪で、サンダルの夏をたのしみたいものです。

 
石井内科皮膚科医院 内科 石井英正:皮膚科 石井眞澄(26回)

 

   
糖尿病合併症予防の一助になれば・・・
後籐良重(32回)
 
【内科】

 こんにちは。昨年も原稿を書かせていただいた、遠州病院内科の後籐良重です。
昨年も糖尿病医療の状況についてぼやいていたような気がしますが、ぼやいているだけでは何の解決にもならないので、少しずつ底辺からの改革ができればと思い、できるだけの活動をしていくことにしました。
 私の専門は糖尿病をはじめとする、内分泌・代謝です。特に糖尿病は国民病といわれるほど日本人の有病率が上昇し、その合併症である血管障害のため、毎日のように病院各科で外来診療、点滴治療、入院、外科的治療の対象となっています。今年はなぜか、年始から糖尿病壊疽の患者さんのオンパレードで、何人もの方の足の指や、手の指、下腿全部を外科や、整形外科で切断していただくことになりました。皆さん、糖尿病治療を途中で自己中断した方ばかりです。糖尿病とは知りつつも、医院に受診すると、食事を制限させられたり、薬やインスリンを投与されたりと、自分では何ともないのに辛い治療を強制されるということを体験したり、容易に想像できるからだと思います。このような患者さんに対して、私たち医療側のできることは何なのでしょうか?糖尿病や、糖尿病の食事療法、その他の治療に対する、誤解を解くことしかないでしょう。その誤解は一部医療側にも責任があります。食事療法を例に取ると、医療側に「あなたは糖尿病だから、おいしいものは食べられない、満腹にはなってはいけない。」といわれれば、患者さんは夢も希望もなくなったと思うに違いありません。インスリン注射の場合も、「こんな血糖値ではインスリン注射にするぞ」と、罰を与えるような言い方をする先生もいらっしゃるとか。医療関係者でない方にも、医療関係者にも正しい知識が必要です。
 医療関係者には、今年から県西部での糖尿病療養指導士育成の会を立ち上げ、4月からその講習会を始めます。医師、看護師、他の医療スタッフ、事務の方でも、糖尿病の患者さんに3年以上かかわっていらっしゃる方ならどなたでも、この講習会を利用して療養指導士の認定を受ける事ができるようにしました。もちろん「認定などいらないから勉強だけ」という方もOKです。糖尿病患者さんの日常生活における、「なぜ?」に正しくお答えできる方を作りたいと思っています。
 一方患者さんの側ですが、特に最近メタボリック症候群といわれたような極初期の糖尿病予備軍の方にこそ正しい食事療法を知っていただきたいので、ホテルのランチコースでそれを体験していただけるようにしました。これまで特に中部地方では、どこのホテルにも病院と共同考案したメニューは無いと聞き、私たちの考えを受け入れていただけたホテルコンコルド浜松の12階レストラン「エトワール」で当院の栄養士と共同で考案したライトカロリーランチ480Calを出していただけるようになりました。3月1日から予約で味わっていただけるようにしたところ、3月末時点で約100名の方に体験していただけたとの事です。糖尿病の食事療法が悲しくなるような内容でないことを十分お分かりいただけたようで、まずは少しだけ前進したかな?

 
JA静岡厚生連 遠州病院内科 内分泌 後藤良重(32回)

 

   
「脂肪肝あり」は「ちょっと太り気味ですね」とは違います!
福地美保(31回)
 
【消化器外科・内科】

 もともと肝臓では、エネルギー源として脂肪を作り、肝細胞の中に貯めています。しかし、使うエネルギーよりも作られた脂肪のほうが多いと、肝細胞にどんどん溜まっていきます。脂肪が蓄積して全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を「脂肪肝」といいます。肥満となる指標として、肥満判定に用いる肥満指数BMIという数値があり、BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算します。肥満指数25以上の人は、体中のあちこちの皮下組織に余分な脂肪を溜め込んでいますが、この皮下脂肪が肝臓にまでついてしまったということです。肥満と診断された人の20〜30%に脂肪肝がみられます。
 脂肪肝は食生活の欧米化に伴って増加しています。自覚症状は出にくいですが、診断されたということは脂肪が溜まって肝臓の働きが悪くなっているということです。対処しなければなりません。
 どんな人が脂肪肝になりやすいのか?といえば、原因は飲酒、肥満、糖尿病など様々です。アルコールが原因の脂肪肝を「アルコール性脂肪肝」といいます。毎日3合以上の日本酒を飲む人の多くに脂肪肝が認められます。個人差はありますが、これはビール大ビン3本以上、ウイスキーダブル3〜4杯以上に匹敵します。元来からだの中に入ったアルコールの殆どは肝臓で解毒され、体外へ排出されます。この解毒の過程で、また肝臓の働きに異常が生じることにより、肝臓中に脂肪が増えて溜まっていきます。
 アルコールが原因でない脂肪肝を「非アルコール性脂肪肝」といいます。原因は肥満や糖尿病などによるものです。肥満や糖尿病の人はインスリンの働きが鈍くなっています。インスリンの働きが鈍いと、肝臓に脂肪が溜まりやすくなるので肥満の人や糖尿病の人は脂肪肝になりやすいのです。
 近年、糖尿病では肝硬変で死亡する率が高いことがわかり、これまで深刻に考えられていなかった脂肪肝が侮れない病気であると認識されるようになりました。また、日本人における軽度の脂肪肝は、いわゆる肥満体型ではない人にも見られています。運動不足とファストフードなどによる不規則な食事で、たった2〜3kg体重が増えただけでも肝臓へ脂肪が溜まる可能性もあります。
 さらに、アルコール性脂肪肝の一部は「アルコール性肝炎(ASH:アッシュ)」へと進み、そのまま暴飲を続けると肝硬変や肝がんにつながる危険性があります。一方、非アルコール性脂肪肝も「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」というASHと同じ病態へ進行することも分かってきました。飽食の時代の肝臓病として大きく懸念されています。
 脂肪肝の診断は、CTや超音波などの画像診断と一般的な血液検査とをあわせて行います。超音波検査では、肝臓内の脂肪の部分がギラギラと白っぽく輝いて見えます。血液検査では、GPTやGOTの値が50〜100前後に上昇し、γ―GTPやコリンエステラーゼが高くなります。ただし血液検査で異常がなくても画像検査で脂肪肝が認められることもあります。脂肪肝が進行すれば、針を皮膚から肝臓へ突き刺して肝臓の一部を採取する肝生検が必要になります。
 しかしながら、ライフスタイルを見直せば、軽い脂肪肝であれば比較的簡単に改善します。節酒や禁酒、カロリー制限をしたり栄養バランスのよい食事を心がけたり、適度な運動を取り入れたりして減量に努めることで正常な肝臓を取り戻すことができます。自覚症状がなくても、手遅れにならないようにきちんと医師の診断や治療を受けることも大切です。生活習慣の効果も確認してもらいましょう。

 
福地美保(31回

医療法人正圭会
福地整形外科消化器科医院
菊川市青葉台1−2−3
TEL 0537−35−3232


   
子供の事故の対処法
横山朝子(23回)
 
【小児科】 

明けましておめでとうございます。前回は子供の事故の防ぎ方について、まとめさせて頂きましたので、今回はそれでも起こってしまった時や、一般にお子様が急に具合が悪くなった時、どうしたらいいか、について述べさせていただきます。このような情報は今やネットで調べると直ぐにでてくるので、日頃から検索しておいて、信頼できるページをお気に入りに入れておいて頂くと、いざという時慌てないですむかもしれませんね。

1. 誤飲
 
1)意識がなかったり、けいれんを起こしていたら救急車を呼ぶ
 
2)灯油、ベンジン、マニキュア、除光液、アルカリ、酸、洗浄剤、漂白剤、樟脳、ボタン電池は吐かせない。食道を傷めるから。水を飲ませる。救急病院へ行く。
 
3)タバコ、ホウ酸団子、ナフタリン、パラジクロルベンゼン、大量の医薬品は吐かせる。口の中にあれば人指し指をほほの内側に沿って入れ、詰まっている物をかきだす。のどに詰まっている時は、頭を下にして背中を叩く。胃の内容物を吐かせるときは、指をのどの奥に入れ、舌を押し下げる。具合が悪ければ救急病院へ行く 。
 

4)化粧品、シャンプー、芳香剤、石鹸、マッチ、クレヨン、シリカゲル、粘土、保冷剤、体温計の水銀、植物活力剤などは異物を取り除きしばらく様子をみる。
具合が悪そうなら、病院へ。

 
どうしていいかわからない時は、中毒110番 つくば 029−852−9999、大阪 072−727−2499 に電話してきいて下さい。尚一件につき2000円かかるそうです。
*病院に行く時は飲んだものがわかる様にビンや説明書を必ず持って行ってね。*
2. やけど
 
まずは洗面器にためた流水や氷で20〜30分冷やす。衣服は無理に脱がさないで上から冷やしてもO.K.。水ぶくれはつぶさない。何も塗らない。赤くなっているだけなら翌日受診でも大丈夫。程度がひどかったり、広範囲なら救急病院へ。
3. 溺水
 
意識がなければ救急車。顔色が悪かったり、泣かなかったり、ぼんやりしていたらすぐに救急病院へ。大声で泣けば様子みる。悪くなれば病院へ。
4. 転倒・転落・頭部打撲
 
意識がなかったり、ぐったりしていたり、けいれんをおこしていたら救急車。吐いたり目や鼻から出血していたり、なかなかったり顔色が悪くぼんやりしていたら救急病院へ。すぐに泣き、あと元気にしていれば様子みる。
5. 動物にかまれた
 
犬、猫、ハムスター、ねずみ等に咬まれたら流水で洗ってから病院にかかる 。
6. ハチにさされた
 
10ヶ所以上だったり、じんましんがでたり、顔色が悪くなったり、息が苦しそうになれば救急病院へ。家では刺された毒針を取り除き、周囲から圧迫し毒を搾り出し石鹸と水でよく洗って冷やす。
7. すり傷・切り傷・刺し傷
 
大量出血は救急車。 広範囲に砂や泥がついて取れないときは浅い擦り傷でも病院へ。 深く、傷口が大きい場合はガーゼハンカチで患部を強く圧迫し、それでも出血が止まらない時は傷口から心臓に近い動脈を骨に向かって指で強く押さえて病院へ。 包丁、はさみ、彫刻刀等で指等を切断したり皮膚等を削ってしまった時は指、皮膚等をしめったガーゼ等でくるみ、乾いたビニール袋等に入れ密閉し、その袋を氷の入った容器に入れて持参する。 傷が浅くても、不潔な場所で切り傷を負った場合は破傷風の心配があるので病院へ。 針やとげやガラスや木片などが体内に残っている可能性があったり、さびた釘など汚いものを刺した場合や、1センチ以上の深い刺し傷は神経や腱を切っている可能性があるので病院へ。 家で様子みる場合は、まずは流水で洗ってください。

*子供を一人前に育てあげるまでには様々な突発的な出来事や事故がおこり悩まされますが、くじけずに頑張りましょう!! 
 
横山朝子(23回

 

   
今年こそ 招福!
成味知子(21回)
 
【眼科】 

 2008年のカレンダーも残りわずかになった10月末、私のクリニック前に産まれたばかりの子猫が捨てられました。猫好きの患者さんが大事そうに持ってきました。拾われた周囲を捜しても、親猫も他の兄弟猫もいません。まだ目も開いておらず、スタッフはかわいい、かわいいの連発。「誰が育てるの?」と聞けば「それは先生でしょう!」どうやら育ててくれそうな所に置いていった?のかも知れません。
実は我が家には、拾ってきた猫が6匹住んでいます。子猫は取り敢えず獣医さんに連れていき、固形食が食べられるまで面倒をみてもらうことになりました。その間に誰か引き取り手がいないかもちろん探しました。最初のうちの「誰かもらってくれないかな?」という家族の会話が、彼の面倒をみるうちに、「家で飼ってもいいかな。」に変化しました。もちろん心配はありました。捨て猫6匹は産まれこそ野良ですが、既に立派な家猫になっています。彼らがすんなり子猫を受け入れるかが問題でした。しかし、飼い主が心配する事も無くチビ猫は無邪気に元気にしています。名前はノーベル賞を受けた南部陽一郎さんに因み、“ようちゃん”。今のところ器量よし、頭よし申し分ない猫ちゃんです。

 12月に入り、半田山に生活拠点があった娘が、授業も終わり国家試験を前に家に戻ることになりました。来年4月に10歳になるジャックラッセルのルークにとって、自分より地位の低い娘が帰ってきたのです。その頃、家の中はようちゃんを中心に回るようになっていました。朝起きると、「ようちゃん、おはよう!」の毎日。後で思えばルークの不満はピークになっていたのかもしれません。
彼の問題行動は娘が戻って来たその日にスタートしました。娘の部屋でおもむろに排泄、おしっこを引っ掛けながら歩きました。その時家族は大して気にしておらず、「ルークはお爺ちゃんになったのかしら?」、その程度に考えていました。
ある日、いつもなら仕事に一緒に出かけるのに、娘がいるからとルークを置いて出てきました。私が出かけてまもなく、彼は家中、下痢をしながら歩き回りました。私の前ではその朝も下痢はなく健康な排泄。突然のあまりの有様に娘は病院へルークを連れて行きました。彼はバリウムまで飲まされ色々検査をするも、これといった大きな問題はみつかりませんでした。
獣医さんからは、人間でも新たに赤ちゃんが生まれると、その上の子が赤ちゃん返りすることもあるように、今回の事は精神的な事も考えなくてはいけないかもと言われました。分離不安症候群という考えがあるそうです。絶えず家族と一緒に生活していて、飼い主に甘えた依存心の強い犬に多くみられるそうです。飼い主との関係が大きく反映されている場合が多々あるそうです。そう言えば、ルークがいつも座る車の座席に娘が座り、彼は不満タラタラの顔をして後部座席から娘を睨み付けて見ていた事がありましたっけ。我々はそれを見て笑っていましたが、それが間違いだったようです。
以前、大好きなおばあちゃんが入院した途端に目がみえないと言った低学年のお子さんがいました。不思議なことに、漫画は読めます。でも視力表は読めません。日記は書けますが教科書は読めませんでした。でも、おばあちゃんが退院したら、憑き物がとれたように、何事もなく全てが正常になりました。
成犬になってからほとんど問題行動のないルークでしたから、只今飼い主も戸惑っています。私は彼に過剰な愛情を与えていたのでしょうね。子育てが終わり、子供達は親離れをしたと思ったらこれですか!景気の悪化で社会全体が憂鬱な時、犬や猫如きで騒ぐなと言われそうですが。

2009年世界中の人間、動物全ての皆が幸せでありますように
 
成味知子(21回

 

   
地域医療崩壊
羽渕由紀子(33回)
 
【眼科】 

 33回卒の羽渕(旧姓 市山)由紀子です。転勤の多い一家に生まれ、中学、高校、大学、卒後研修医の期間を浜松やその近辺で過ごし、その後結婚と同時に、再び転勤の多い主人とともに移動に次ぐ移動で、現在は秋田市移り、市内の総合病院で眼科医をやっています。移動の多さは覚悟の上でしたが、よもや東北地方に居住することになろうとは夢にも思いませんでした。秋田と言えば、雪、田んぼ+お米、きりたんぽ、なまはげ、温泉・・・という、ほのぼのとするイメージがあると思います。そんな秋田に来てもう足掛け7年になります。

 秋田で知られていそうで知られていないことは、日照時間が全国ワーストということ、対する浜松は全国トップなのです。そういえば浜松は四季を問わずいつもからっと太陽が照りつけていましたよね。秋田は雨や曇天が多く、日照がとても貴重です。たとえ晴れていても湿度が高いので、洗濯物がからっと乾きません。秋田美人の美肌はこの日照の短さと湿度からきているとも言われています。しかし、この気候は精神衛生上、悪影響を及ぼしています。雨天、曇天、短い夏、長い冬・・・うつ病、特に冬季うつ病がとても多いのです。自殺者の人口比は全国ワーストの記録を更新し続けています。

 浜松は産業が多く、若い労働者が溢れていますが、秋田は若者が流出し、高齢化社会がものすごい勢いで加速しています。限界集落という言葉をご存知ですか?高齢化の果てにその集落が近い将来消滅する可能性の高い地域です。秋田県には限界集落がたくさん存在しています。そのような地域から、商店が消え、路線バスが消え、医師が引き上げ、ますます住みにくさを悪化させています。交通手段のないお年寄りが買い物をしたり、病院に通いたくても通えないのです。
豊かな自然に恵まれ、農業、漁業、林業が盛んな秋田ですが、その産業を継承する人たちがいません。その一方で近年の食糧危機問題、日本の低い食糧自給率の話を聞くと、これでいいのかな、秋田に広がる広大な農地や森林は誰が守るのだろう、と不安や疑問がふつふつと湧いてきます。

 医療事情も最悪です。地域医療崩壊という言葉を良く耳にすると思いますが、自然と医師が集まる所では実感はないのではないでしょうか?秋田はまさに医師不足(正しくは医師偏在)、地域医療崩壊の真っ只中にあります。秋田県の唯一の医学部がある秋田大学から卒業した学生が秋田県に留まる割合は低く、逆に他府県から秋田県に流入してくる研修医の数も少ないのが現状です。広大な秋田県に点在する病院はどこも医師不足。診療体制がとれず、経営難に陥っている病院も少なくありません。病院の中で働く医師へは膨大な仕事が重くのしかかり、みな疲弊しています。それに耐えられなくなって都会へ移る医師もいます。ますます医師が減り、負担が増え、秋田で医師をやろうとする若者が減っていきます。この悪循環をどうやって断ち切ることができるのか・・・・

 専門のお話からはほど遠い話題となってしまいました。ほのぼのとしたイメージの秋田の裏側にある、地域の抱えるさまざまな問題。秋田だけでなく全国に同様の問題を抱えるところは少なくないと思います。でもどうにかしないと、これはもう、その地域だけの問題ではないことは明白です。

 

羽渕由紀子(33回)

 

   
雑感 〜麻酔科医として〜
藤本久実子(34回)
 
【麻酔科】 

 新34回卒の藤本(旧姓平山)久実子です。私達新34回卒生は2010年にせまった同窓会総会を目指して、少しずつ始動して います。皆様の暖かいご指導、ご支援、よろしくお願いします。(女性パワー、大事ですよね。)

 私が医学生の頃、「将来何科の医師になりたいか?」と問われて「麻酔科」という新入生は皆無でした。(あ、後輩にひとりいたっけ。彼は某大学の麻酔科教授のご子息でした。)
 最近は医療系のドラマや映画などもリアルで、麻酔科医も主役級で登場したりします。(なかなか「理想の麻酔科医」には出会えませんが。)ニュースでも「医師が足りない」筆頭に産婦人科医や小児科医とならんで、たびたび麻酔科医が登場します。
 皆さんは「麻酔科医」ってどんな仕事をしていると思いますか? 
 第1の仕事はもちろん、手術時の「麻酔」です。単に「麻酔をかける」だけでなく、周術期(術前、術中、術後)の全身管理を行います。(残念ながら、すべての手術の麻酔を担当するには麻酔科医は不足しているため、麻酔科医によらない「各科麻酔」が存在します。)

 麻酔時の各種ブロックの手技や鎮痛薬などの知識を生かして、「ペインクリニック」(痛みの治療)も行っています。(ペインクリニック医の多くは麻酔科出身です。整形外科など他科からの先生もいらっしゃいます。)
 麻酔時の全身管理の知識を生かしての「集中治療」や「救急医療」などに携わっている麻酔科医もいます。(集中治療医や救急医は、最初からその分野の専門家の先生も多いですし、他科出身の先生も多数いらっしゃいます。)
 私自身は、現在、聖隷三方原病院麻酔科勤務で、「ペインクリニック」外来の担当(月曜日午前)と「麻酔」の仕事をしています。
 今回、まだまだ一般的に知られていない「ペインクリニック」の話もしたかったのですが、「麻酔」についても、ぜひ知っていただきたいことがありますので、聖隷三方原病院が発行している「みどりの通信」に掲載した文章を再掲させていただくことにしました。「みどりの通信」は聖隷三方原病院内で無料配布しています。バックナンバーは聖隷三方原病院のホームページに掲載されてます。(『トピックス』の中にあります)毎号、各科や各部門の専門家が最近のトピックスなどを掲載していますので、よろしかったらご覧下さい。   
     http:// www.seirei.or.jp/mikatahara/

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     知っておきたい麻酔の話 〜長期的術前準備が大切です〜

 麻酔科医が管理する手術の前には麻酔科医による術前診察を行いますが、多くは手術の前日です。予定手術をより安全に受けていただくためには、手術が決ったら(麻酔科術前診察の前から)すぐに、ぜひ、患者様ご自身に事前に準備していただきたい事があります。
1)歯
 全身麻酔の場合、麻酔薬の影響で自力では充分呼吸が行なえない状態になります。そのため,気道確保といって器具を使用して喉に管を入れ、必要なら人工呼吸を行ないます。意識がなくなってから行なうので苦痛はありません。しかし、口が充分開かなかったり、ぐらついたり弱い歯があると、うまく管が入らず、呼吸の補助ができず、危険性が増します。歯が折れて気管に入れば異物摘出術が必要になります。気道確保は救急蘇生時にも行ないますので普段から歯の手入れは充分しておきましょう。
2)禁煙
 喫煙が各種の癌や心疾患・肺気腫などの原因や誘因になることは有名ですが、麻酔にとっても大敵です。全身麻酔後には痰が増加し、充分排出しないと肺炎の原因になります。喫煙者は普段から痰の量が多く、排出も困難になっています。痰の量、排出困難は2週間程度の禁煙でかなり改善します。また、麻酔中は酸素不足の状態になりやすく、その予防のために酸素の投与を行ないます。喫煙者の血液は普段から軽い一酸化炭素中毒と同じ状態になっており、酸素を運ぶ予備力が落ちて身体の隅々では酸素欠乏ぎみになっています。一酸化炭素中毒状態は24時間禁煙すれば解消します。喫煙により血管収縮を起こすため、心筋梗塞などの危険性が高まります。手術直前の喫煙は言語道断です。禁煙は周術期の合併症を自ら確実に減らせます。ぜひ、手術を機会に禁煙して下さい。
3)予防接種
 全身麻酔をすることによって、免疫力が落ちると言われています。予防接種は、ワクチンにより軽く感染させて抗体を作る事によって発症を防ぎます。予防接種直後に全身麻酔を受けると「軽い」感染のつもりが発症してしまったり、予定通りの抗体産生が行われずに免疫がつかなかったりという事が起こる可能性があります。生ワクチンで4週間、不活性化ワクチンで2週間以内の予定手術は避けた方がよいでしょう。詳しくはご相談下さい。
4)合併症、常用薬
 手術麻酔時には日常生活以上に身体に負担がかかります。高血圧、心疾患、喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの治療の具合によって、周術期のリスクが高くなることがあります。日常生活で支障がなくても、手術時には危険という状態もありますので、主治医に手術を受けることを相談しましょう。手術を受けるために入院しても、他の病気の治療のために使用していた薬は継続されます。ただし、手術を受けるためには不都合な薬があります。代表的なものとしては、抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)では手術時の止血が悪くなる、ピルなどのホルモン剤では長期臥床による血栓の危険が増える、などがあります。術前に数日から4週間程度の休薬が必要になりますので、手術を決める前に現在治療している病気と使用薬剤(サプリメントも含め)をお知らせ下さい。
                    (みどりの通信2008年2月号より)
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 せっかくなので、ちょっとした「つぶやき」を…
 
*咀嚼(食べ物をかみ砕くこと)は脳を活性化すると言われてます。認知症(痴呆)傾向のある方は入れ歯が合っていない傾向があるのは、ぼけているから入れ歯が合わせられないのか、入れ歯が合っていないか らぼけてしまうのか…。
 
*気道確保のための「気管挿管」は救急現場でも有力な救命行為です。救命率を上げるため、救命救急士が「気管挿管」を行える様になりました。もちろん、「やっていい」と言われてすぐにできることではありません。救命救急士の資格がある方が、さらに研修を積み、人形での練習をした後、病院で安全に落ち着いてできる環境で「実習」を積み重ね(30例)、やっと現場で行うことができます。その「実習」を全身麻酔時に行わせていただいています。麻酔指導医が必ず立ち会うので、危険はありません。「全身麻酔で手術を受ける」だけでも大変なことだとは思いますが、ぜひご協力をお願いします。
 
*世の中「禁煙」「分煙」が進み、昔ほど「受動喫煙」の機会は多くなくなったと思いますが、「受動喫煙」でも喫煙による不都合は起こります。喫煙による肺気腫は、程度の差こそあれ、必ず起こり、禁煙することにより進行を止めることはできますが、改善は難しいです。術前の呼吸機能検査で肺気腫傾向がある方の中には長年の「受動喫煙」(多く は家族)の影響だろうと思われる方がいらっしゃいます。
 
*先日の学校公開日に北高生の授業の様子を見せていただきました。ちょうど保健の授業で「医薬品と健康」の講義が行われていました。高校時代に教わったことを大人になっても覚えていてくれるといいですが…。術前診察をしていて、ご自分の飲んでいる薬が何であるか、何のために(病名)飲んでいるのか、理解していらっしゃらない方が時々いらっしゃいます。(院外薬局で「薬の説明書」を発行することもあり、以前よりは減りましたが)今は「おまかせ医療」の時代ではありません。かといって、勝手に処方された薬をやめてしまったり(せめて、「飲んでいない」と処方した医師に言って下さい。)他の人にあげたり……絶対やめて下さい。もちろん、理解した上で、ご自分で調整できる薬もあります。
 
*術前だけでなく、医療機関にかかる時には、既往症(いままでどのような病気をしたか、手術などを受けたか)、合併症(現在治療している病気、もちろん処方内容)、アレルギー(薬、食品など)の有無、最近の健康診断の結果などをまとめておいていただけると助かります。術前の場合には手術を受けた時の麻酔方法や不都合なことがなかったか、血縁者に麻酔による重篤な合併症を起こした方がいらっしゃらないかを聞かれます。想定したくはありませんが、緊急で手術を受ける時にも情報は多ければ多いほど安全につながります。

 ついついしゃべり過ぎました。皆様の何か役に立てれば幸いです。

 

聖隷三方原病院麻酔科   藤本久実子(34回)